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執筆者の写真厚美 勝又

エフェクチュエーション

「自分のスキルを使って何か起業できないかな?」


日経新聞の記事によれば、近年、自分が既に持っているスキルセットを使って起業・創業してみる起業家が増えてきているとのことです(“思いたったらまず起業”,2024年2月14日 日経新聞朝刊 P15)。


米国発の「エフェクチュエーション」と呼ばれる起業手法が日本で広がっています。手持ちのスキルですぐに始められる事業を立ち上げ、その後に経営方針を柔軟に変えていく。ターゲットの市場を予め調査研究して、そこから逆算して事業計画を練るという、従来の手法とは対照的なアプローチです。定着すれば、起業家や創業者の裾野が拡大する可能性があると期待されています。


この考え方は、2001年に米国バージニア大学のサラス・サラスバシー教授が提唱した理論です。成功した起業家の経験則から抽出した「手持ちのスキルや技術を使って事業を始める」、「負ってもいいリスクを先に決める」など、5つの原則が柱になっています。日本でも、2021年に一般社団法人日本エフェクチュエーション協会が立ち上がっています。


一方、従来の一般的な起業手法は、「コーゼーション」と呼ばれます。ターゲットの市場や領域を見極め、競合分析や市場調査などを通じて事業計画を練っていくというものです。さらには、アイデアを短期間で事業化したうえで、最低限マーケットで満たされていない製品やサービス群を世に出してみる。その後に、実際の市場ニーズを反映しながら改良する。いわば走りながら考える「リーンスタートアップ」という手法もあります。


日本の開業率は2020年時点で5%と、英国(同12%)や米国(2019年9%)に水をあけられています。実際の起業経験を持つ身近な知人が少なく、手本となるロールモデルを想像しにくいことがその一因とされています。


日本政府は、2022年にスタートアップ育成の五か年計画を策定し、スタートアップ10万社を創出する目標を掲げ、様々な支援策を施行しています。神戸大学大学院経営学研究科の吉田満梨准教授は、「エフェクチュエーションの考え方が広がれば、自分には無理だと思っている人が社会課題解決の一歩を踏み出せる」とみています。

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